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英会話ができるようになるために、必ず獲得しなくてはいけない視点とは?『海外ドラマはたった350の単語でできている』レビュー

 

 

 

間違いなく良書。アメリカで医学系研究員として2年間勤務していた著者の体験を基に書かれた本書は、英語の学び方をもう一度定義し直していて、方法論として有効だし、英語学習者、とくに多読に時間と力を割いたにも関わらず異国で報われなかった者(私を含む)には、本書こそ、手に取るべき1冊と言えます。アマゾンのレビューにある『これじゃ話せるようにならない』という批判や『実践的な問題が不足している』などの無理な注文は、本筋を読み違えているので無視するのが懸命。『英語学習のレベル別コンテンツを知りたかったら、TOEICの点数別学習指南を読め』という、冗談のような真実な話があるけれど、この1冊はそれに取って代わりうるほど丁寧に、「私たちと英語との『距離感』」別に適切な学習法が提示されています。それだけでも貴重と言えるけれど、表題の『350語』というオドロキの数字を含む惹句を割り出す手続きも丁寧に描かれていて素晴らしい。

距離感という一語こそ、本書の中心を占めます。人それぞれの、その「英語との距離感」から学習法が提示されるのですが、それは印象論に堕ちません。しっかりと、数字で検出されるもので、それが一層信憑性を高めています。例えば、スピーキングレベルを測定する場面では、次の日本語を英訳すよう言われます。①今夕食を食べています。②明日は買い物をするつもりです。③ 昨日は どこに行ってましたか? ④彼は大阪で働いています。⑤何時に家に帰るの? そしてレベル判別は、秒数で判定されます。いわく「答えが思い浮かぶのに3秒以上かかるならあなたはスピーキングレベル1です。」と言った具合に。この明確な判定法はスピーキングだけに限らずリスニングでも適用されています。だから、自分と英語との距離感を数字で把握し、そこからレベルを上げるために、何をすることが有効かが説明されているので迷子になることがない。余談、「ソフトバンクのメインターゲットは全国民である、だからペルソナ(製品・サービスのターゲットユーザー)を想定しない」と言ってましたが、一般、英語学習書はそれと同じことをして学習者を路頭に迷わす罪過を犯しがちです。つまり全員を、ひとしく英語学習における「聞き分けのない、注文の多い嬰児」として勝手に扱いがちで、それぞれのレベルを無視した上で「甘言」を弄す。それをまず避けようとしている点で、他の英語読本と一線を画しています。だから、このタイトルは、簡単に英語習得ができますと謳っているわけではなく、ただ単に事実を述べているのに留まります。つまり海外ドラマは350語で8割以上の会話が成り立っています。さてあなたの「英語との距離感」はどれくらいありますか。それだけあるなら、結構大変ですが、このようにレベルアップしていけば習得できますよ、という構成というわけです。 

350語の算出方法についても一見の価値があります。 その分析は読者の納得のいくものです。どこかで耳にした「毎日読む新聞に使われる言葉は20000語、しかし9割は一度しか出ない」という、これは日本語を指しての言葉でしたが、それとも符合します。そして、読者は、統計に使われている『SATC』全94話、トータル45時間の中で登場する単語のランキング350を見て、勇気を抱くことができます。さらに本書の特筆すべきところは、算出後の傾向分析です。そのトップ350語が「トップに位置すること」が意味することは何か?ここではニュースで使われる単語が対比として持ち出されます。まるで異なるランキングを構成するニュース頻出単語群と比較したとき、それは明らかになります。筆者はそれを「自分フィルター」という言葉で表現します。自分というフィルターを通して発露されるものが会話であり、「『私がどう感じ、どう思うか』をやりとりすること。これこそが日常会話の本質だということです」となります。この分析で興味を持ったので、日本語でも当然先人がしているものと、少し調べて見ましたが、「日本語の日常会話の語彙は10000を超える、だからえらいとか、感情表現が豊かだという結論ばかりでちっとも面白くない。10000という数字も少し疑っています。それはともかく、英語が自分の感情を主に会話のタネとしていることを知れたのは、スピーキングの根源としてとても有意義です。どうも日本人の私の感覚ですが、日本語は第三者視点にあることが多い。主語の省略が、そう思わせるのかもしれませんが実感としてある。それによって、曖昧で、持って回った表現をしたがります。そしてそれを英会話にも持ち込もうとするからややこしくなる。文法知識だけは十分に持ち合わせているということが仇になって、さらに非道いことになっている。シンプルでいいんですね、英会話は。私、私、私でいい。これはニュースの固い表現や、多読に使われる小説などでは導き出されなかった結論です。だから筆者の言葉を借りれば、英語のスピーキング学習の要点は、「自分が主人公『I』になる視点が必要だということ」に結論されるのです。

 

 

 

【あとがき】

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